2015/06/25

任意団体と個人情報保護法の関係についての解説

任意団体と個人情報保護法の関係について、お問い合わせがあった件をこちらでお答えいたします。

私のブログやTwitter、拙書で「任意団体は個人情報保護法の適用範囲外」と記載している部分がありますが、「任意団体は個人情報保護法の対象であるのではないか」というご指摘についてです。

個人情報保護法の理念からは、個人、任意団体、企業の形態を問わず、事業の用に使用するのであれば対象事業者になるというのが原則です。その意味では「任意団体であっても適用される」というのはご指摘の通りです。

さて、ではなぜ私が「任意団体は範囲外」と記述しているかというと、実際には任意団体に対しては抜け穴ばかりで、任意団体に対して制限されるのは特定の事業を行っているごく一部に限られるからです。

ですので、私は一般的なこととして「任意団体は対象外」という表現を使っています。これには大きく2つの理由があります。

まず、過去6ヶ月にわたって取り扱う個人情報が5000名以下であれば、法の適用対象外となります。ほとんどの任意団体は5000名以上の個人情報を取り扱うことはありませんので、この時点で対象外となることがはっきりします。

ただし、事業の用に供する個人情報データベース等を構成する個人情報によって特定される個人の数の合計が、過去6か月以内のいずれの日においても5,000を超えない者は、除外されます。” 
消費者庁 http://www.caa.go.jp/planning/kojin/gimon-kaitou.html#q2-12 

さてこれだけで対象外になるわけですので、その先をあまり考える必要がないというのでもよいのですが、拙書では敢えて5000名の条件とはわけて任意団体は適用外と書いていますが、これには別の理由があります。

まず個人情報保護法では、実務に関して主務大臣制をとっており、その団体が行う事業の内容によってどの大臣の管轄なのか、どの省庁の管轄なのかが決まります。(事業が営利か非営利であるかの区別はありません)

ここでの事業というのは、非常に曖昧な定義で、さらに次の文章にもあるように「なります」ではなく「なり得ます」と直接の言及を避けた表現となっています

”個人情報保護法にいう「事業」とは、一定の目的をもって反復継続的に遂行される同種の行為の総体を指すものであり、営利・非営利の別を問いません。したがって、非営利の活動を行っている団体であっても個人情報保護法の義務規定の対象となり得ます。
ただし、自治会や町内会については、5,000人を超える者で構成される組織は少ないことから、「個人情報取扱事業者」に該当しないことがほとんどであると考えられます。”
消費者庁 http://www.caa.go.jp/planning/kojin/gimon-kaitou.html#q2-17

結局は、その任意団体が具体的にどんなことを事業としているかによるということですが、それこそ団体によって千差万別です。一つの団体でも複数の側面の事業をやっていることも普通で、一概にこの団体はこの事業というように決められないということがあります。
さらに、事業の内容がはっきりしたとしても、それを管轄する大臣や省庁が決まっていないことが多いのです。
大臣や省庁は確実に自分の管轄である事業に対しては実務を行いますが、そうでないところに関しては「うちの管轄ではありません」となります。

例えば自治会やPTA、市民サークルなどは、管轄の所在がはっきりしません。これは個人情報保護法のとりまとめを行っている消費者庁に確認しても、それはどこの管轄か答えられないことがほとんどなのです。
実際、上に挙げた3つの任意団体の例についても、消費者庁はどこが管轄にあたるのかは実務レベルでも認識できていません。

拙書で「任意団体は対象外」と言い切ったり、「任意団体については大きく抜けている」というのは、この実態によるものです。

PTAに関しては、その事業内容や設立根拠自体が不安定です。一面では社会教育法の社会教育関係団体と取り扱われる場合がありますが、実際のPTAの事業が社会教育だけであることは少ないでしょう。
仮にPTAが社会教育関係団体として設立され、その事業も社会教育関係団体としての事業のみであれば、もう少し細かな議論の余地もあるのですが、それにしても最終的に実質的には対象から抜けて落ちてしまうのです。

私は、個人情報保護法の範囲外であってもPTAは、個人情報保護について文部科学省のガイドラインや自治体の定める個人情報保護条例程度の個人情報保護の基準を規約に定めるべきで、合わせてそれに直接関係する入退会についても整備するべきだと考えます。

現在個人情報保護法の改正について協議されており、その中には5000名という制限を撤廃するという内容も含まれています。
これまでは5000名に達しないからと、消費者庁をはじめそこでその先を深く考えずに済ますことができましたが、これからはそういかなくなる可能性が高いです。
そうなったときに、現在ある大きな抜け穴がそのまま残るのか、それとも少しずつ塞がってくるのかどうかについて注目していきたいと思います。

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